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常田富士男氏と『まんが日本昔ばなし』
録音スタジオにて |
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撮影/落合高仁氏 |
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─ 「まんが日本昔ばなし」のナレーターをされていた頃のお話や、物語を通して感じた自然へのイメージをお聞かせください。
━ 私は今では演劇という仕事を選び、都会に住んでいますけど、小学校3年生で終戦を迎えて、疎開先の田舎で物のない生活も経験しています。
その頃は運動靴が一足しかなくて、雨が降るともったいなくて、裸足で学校に行きました。
でも、まったく悲愴感がないの。
逆に、おもしろいのよ。ツルツルすべって!(笑)。道を真直ぐいけばいいのに、わざわざ近くの土手を登って、またそこをすべり下りて学校へ行ったり。
土手を上手にすべることがとても自慢だった。また食料もないから顔に土を付けてドロンコになって野菜を植えたりね。
そんな経験があるから「自然となじみになって元気になっちゃう」。だから昔ばなしでは、雨垂れがポトッて落ちた時の楽しさやそよ風が吹いた時の快さ、というような自然がくれる感覚を大切にしながら声の出演をしましたね。
自然に触れた経験が後々どういう喜びに変わって、どんな栄養になっていくかは人それぞれ違うと思いますが、確かに素晴らしいものとして残りますよね。
『昔ばなし』を通して感じたことは、自然というものは実に残酷。恐くて、大きくて、太刀打ちできないもの。運命的にどうすることもできないもの。そして、やはり人間が寄り添っていくものだと思います。
その中でコツコツと、欲張らずに暮らしていくしかないのでしょうね。そういうことを教えられた番組でしたね。
だから、私は「地球にやさしく」という言葉がピンッとこないの。だって人間がやさしくできる訳ないのよ。
私たちも自然の一部だし。それに森や木は、私たちの先輩ですもの。
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