「あそこに大きなブナの木がありますよね。あの木の高さ、どれくらいだと思いますか」「30mくらいかな?」と誰かが言うと「それでは実際にはかってみましょう」と小林さん。カバンの中から秘密兵器を取り出しました。
 「これはFAX用ロール紙の筒に45度の三角定規を付けたモノです。これを水平に持ちながら、筒を覗いて木のてっぺんが見える位置まで移動します。その場所から目的の木まで歩いて、歩いた歩数に歩幅をかければ木の高さがわかります。

 なれてくると道具がなくても感覚でわかるようになりますよ。」とのこと。
 ちなみに今回測定した木の高さは約25〜6m、なかなかいい勘をしていました。
手作りの「高さ測り器」
これを筒の下からのぞく
歩幅をはかってます
あの木まで何歩あるかな?
 「ところでみなさん、去年の冬この森にはどれくらい雪が降ったと思いますか?」との質問に「60m!」「3m!」と子供達、「実はブナの木を見ると昨年の積雪量がわかるんですよ。」と小林さん。
 「よく見てみるとブナの木にコケが生えていますよね。そして地上4m位のところで幹の色が変わっていますが、だいたいどの木も同じような所にありますよね。実は雪解けの時に一緒にコケを落としてしまうんですね。それでラインができるというわけです。」
 なるほど!ということは昨年のこの辺の積雪は4m程度ってことですね。
あの辺まで雪が積もったんだね 白っぽく見えるコケに注目!
 丸太橋を渡ると、さらにブナの多い地域へ。
 「こんなに立派なブナの木がたくさんあるのに何で利用しないんだろう?って不思議に思いませんか?
 ブナって漢字で"木"へんに"無"とも書きますよね、ブナは用無しの木ということでつけられた名前なんです。また切れば腐りやすく、狂いやすい。燃えやすく炭にもならなければ、椎茸を育てるオダ木にもならない。その上こんな山奥から運び出す労力を考えたら、本当に役にたたない木だったんですね。」
 なるほど、ブナの名前にはそんな由来があったとは。

 でも最近は技術が発達し、切ってすぐ人工的に乾燥させることによって家具などに使われるようになったそうです。
丸太橋には要注意!
丸太のてっぺんを踏まないように
このブナは400歳?
◆木と人のつきあい方は…
「ところでここはとても見事なブナの原生林ですよね。 ブナ林と言えば世界遺産で有名な白神山地を思い浮かべる方も多いと思いますが、一度伐採されると今のようになるまで、また4〜500年かかるんですね。
  ですから木を切ることはいけないことではないのですが、木を切る一方で育てる努力もあわせて行っていかなければいけませんよね。」 とも小林さんは教えてくれました。
 ブナにまつわる様々な話を聞きながら散策しているうちに、どこからか川のせせらぎが聞こえてきました。
 「今日はこんなに天気が良くて、雨も降っていないのに、この小川の水はどこからやってくるんでしょうか?
 実はみなさんが歩いている地面がスポンジみたいに水をため込んで、少しづつ川へ流しているんですよ。そしてそのスポンジ上の地面を作っているのが、ブナの木なんですね。」
水はどこから出ているか… 小林さんが歩きながらささっと作ってくれました。おもしろい!
 すると子供達から「じゃあ木がなくなったらどうなるの?」との質問。「木がなければ山に降った水は一気に川へ流れ込んでしまうよね。そしたら洪水や土砂崩れが起きるかもしれない。実はそうした災害から私たちを守ってくれているのもこの森なんですよ。」
 子供も大人も森の大切さを知って、ちょっと感動した様子でした。

 その時「ビンゴ!」の声が藤石インストラクターのチームから。最後の窓は<やわらかいもの>そう、このスポンジ状の地面、まさしく柔らかいモノだね。
地面がフワフワしてるよね
 日当たりのいい場所では何か見つけたようです。小さな動物、とかげの仲間の"カナヘビ"でした。男の子たちはちっとも怖くない様子。すっかり仲良くなってます。
 午前中のメニュー、"フィールドビンゴ(自然観察会)"も終了し、参加者全員そろって川辺で食事。この川がさっき聞こえてきたせせらぎだったんだんだね。猿田川のブナの森が作った源流はとってもきれい!
 そしてすがすがしい水辺と緑の中で食べるおにぎりは、やっぱりサイコーにおいしかったよね。
僕にもさわらせて! かわいいね
川面を流れる風が気持ちいい
 
ワンダーキャラバントップへ