─ それはどのようなテーマガーデンだったのですか。
━『心の中の鎌倉』は人工的なグランドデザインを極力排除して、代わりに鎌倉の山や湿地などの自然や、鎌倉らしい庭の意匠と材料を盛り込んで12軒の集落をつくりました。
参加してくださった造園家やデザイナー、園芸家の皆さんが同じ考えの下で担当部分を手掛けて、落ち着いた風景ができ上がったのです。
そして「このようにして“日本の集落”はできるのではないか」と思いました。
日本は「向こう三軒両隣」という考え方ですよね。ご近所の方たちと協調していこう、って。それは日本独自の自然観というか「和」を尊ぶ考え方なのですから、そういう考え方を持った人が集まって、決しておかしな集落ができるわけないのですね。
生っちょろい考え方だと思われる人もいるでしょうが、私は逆に高度だと思うのです。生活文化とか意匠とか、自然風土に対する考え方とか、生半可であっては協力できないですよね。
ひとり一人が腕がよくて、技もあって、知識もあって、さらに心がけがなければできないことですから。
非常に難しいやり方だと思うのですが、それがガーデニングショーの時は参加された方々が謙虚で、また、よく辛抱してくださったのでしょう。
和気あいあいと進んで、皆さん「工事がとても楽しかった」って。
また、その集落の真ん中に祠を祭ったのです。そうしたら風景が不思議と落ち着いたのですね。鎮守の森は普段は目立たないのですが、なくなると喪失感の大きなものですね。
だから考えてみると日本は不思議な国ですね。欧米の人から見たらなかなか理解できないかもしれません。
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